狛犬の集会に遭遇 第38話

 いつもの喫茶店の窓際の席で絶品ナポリタンを頬張りながら表通りを眺めていると、先程から白い犬が何匹も何匹も狛犬神社に入って行くのが目に止まった。「神社で何かやっている」、そう直感した。急いでナポリタンを流し込み神社へ向うと境内は狛犬達で埋め尽くされていた。「凄い数だなぁ」

 

 「第512回関東狛犬集会を始める!」、少し大柄な狛犬が宣言すると集会が始まった。司会進行の狛犬が議題を提示すると次から次へと意見が挙がる。「皆で地面を押さえつける」「地面の下に潜ってプレートの歪をゆっくり戻す」等など、どうやら地震がテーマらしい。「近いうちに地震でも起こるのだろうか?」、彼らの真剣なやり取りに少し不安を覚えた。

 

 狛犬ならではの発想力、自由奔放さが興味を引いた。白熱した議論も終り、狛犬達は地震に対する対策を取りまとめ、意気揚々と帰って行った。狛犬達の集会に遭遇するなんて、めったにないこと、その不思議な光景に時の経つのも忘れ、その余韻に浸っていると、遠くで聞こえる何かのサイレンの音で我に返った。時刻は13:30を回っている。足早に神社を後にした。

コメント: 0 (ディスカッションは終了しました。)
    まだコメントはありません。