小さな宇宙船? 第41話

 

冬の銭湯は天井が見えなくなるほど湯けむりが立ち上り、まるで雲の中に居るような錯覚を得る。湯船に肩まで浸かり両足を伸ばす。「フゥ~」想わず声が出る。しばし立ち込める湯けむりをとりとめもなく眺めていると、朧に光る発光体が右に左に不規則に揺れ動いていることに気が付いた。

 

 蛍光灯の灯りだろうか?それにしても不規則に揺れ動くはずがない。かすかだが音も鳴っている「うぉん、うぉん、うぉん」、まさか宇宙船?それにしても小さすぎる。目の錯覚かも知れないと何度も目を擦ってみたものの、小さな宇宙船らしき発光体は湯煙の中をゆらゆらと漂っている。

 

 次の瞬間、脱衣所の扉が開き、人と共に、冷たい風が勢いよく流れ込んで来て、湯けむりは掻き消され、それと同時に発光体も何処にも見当たらなくなっていた。目の錯覚などではない、確かに小さな宇宙船らしき物体が浮遊していたのだ。もしあれが宇宙船なら、小さな宇宙人が乗っていたのだろうか?裸の人間が大勢で湯船に浸かる場所など宇宙人から見たら物珍しい光景だったに違いない。次に来たときはただ見学するだけでなく湯船にも浸かって行ってもらいたいものだ。 

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