梅雨の到来を告げる精霊 第43話

 毎年、梅雨の到来を告げる精霊たちがやって来るのがこの時期である。いつもだと生臭さに部屋が満たされてから気が付くのだが、今年は少し様子が違う。一匹の蝸牛が部屋の中を隅々まで何かを調べるように這いずり回っている。もちろんこの蝸牛は精霊なので普通の人には見えないことは言うまでもない。

 

 一匹で来ていること自体が普段とは違う展開なのである。蝸牛に話を聞いてみると、今年は巡回ルートの環境が大きく変わってしまっているので、先遣隊が調査をし、その情報をもとに本陣がやって来るまでに万全の対策を立てると云うのだ。足早に先遣隊が調査を終え帰っていくと、翌日には別働隊がやって来て、人の部屋の中に青葉の種を蒔いて帰って行った。

 

 青葉は蝸牛の大好物らしい。それにしても何故、我が家が青葉畑にならなければならないのか、何故、精霊たちの巡回ルートに我が家が指定されているのか、以前から聞いてみたかったのだが、聞いたところで巡回ルートを変更してくれそうもないので、聞くだけ無駄である。むしろ、季節の風物詩として楽しんだ方が、前向きに違いない。

 

 

 そうそう、本陣はいつごろやって来るのか?と尋ねたところ、あと4日後にやって来るよって、蝸牛は教えてくれた。そのころには青葉も食べごろになっているのだろう。

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